迅ブログ

忘れたときの備忘録と思ったことを書く雑記

フレネル積分(とガウス積分)

f:id:jin_yuki:20210102190421p:plain

こんにちは、迅です。

量子力学の本を読んでいたときに、
ガウス積分複素数に拡張したものが出てきました。

特別難しいことではないですが、
メモとして書き留めておこうと思います。

問題


フレネル積分
aを正の定数とするとき、\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} dx e^{-iax^2}を解け。

コメントと解法

ネイピア数の指数部分に虚数iを含んでいる点がガウス積分と異なるところですね。

ガウス積分は、例えば正規分布 (p(x)\propto e^{-\frac{x^2}{2}}) を考えるときに
確率分布は全空間で積分をしたら1になるよう要請されていることから、
正規化するために計算することがあったりします。

ちなみに、ガウス積分
\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} dx e^{-ax^2} = \sqrt{\frac{\pi}{a}}
と得られます。
(ガウス積分は本題とずれるので、下を参考にしてください。)

まず、\displaystyle\int dz e^{-iaz^2}複素平面すべてで積分することを考えます。
これは被積分関数が正則なのでコーシーの積分定理よりゼロになります。

一方で、z=re^{i\theta}と変数変換することで、
図のように積分領域を分割してもいいはずです。

f:id:jin_yuki:20210102170212p:plain

円弧の半径をRとすると、各領域の積分は次のようになります。

(1): \displaystyle \int_{-R}^{R} dr e^{-iar^2} となり、これはほしい結果のRの無限大極限前の表式ですね。
※ 実線上なので、\theta=0の場合を考えています。

(2): \displaystyle iR \int_0^{-\pi/4} d\theta  e^{i\theta} e^{-iaR^2 e^{i\theta}}となります。
\thetaは反時計回りを正としました。
rRで固定されていることに注意すると、ヤコビアンdz=iRe^{i\theta}d\thetaです。

ここで被積分関数に着目すると
\displaystyle  e^{i\theta} e^{-iaR^2 e^{i\theta}} = e^{aR^2\sin\theta} e^{-i(\theta + aR^2 \cos\theta)}
となります。(e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\thetaを使いました。)

一見、R\rightarrow\inftyで発散するように見えますが、
元の被積分関数において \theta \rightarrow -\thetaと変換するので、第一項がゼロに収束し
この積分Rの無限大極限でゼロになります。

(3): \displaystyle \int_{R}^{-R} dr e^{-i\pi/4} e^{-iar^2e^{-i\pi/2}} です。
\theta=-\pi/4で固定されたところをr積分するので、ヤコビアンdz=e^{-i\pi/4}drです。
積分の向きが第4象限から第2象限に向かっているので、
   r: R\rightarrow -Rと向きが変わっていることに注意してください。

\thetaが固定されていることからこの積分はもう少し簡単にできて、
\displaystyle -\frac{1}{\sqrt{2}}(1-i) \int_{-R}^{R} dr e^{-ar^2}
となります。
ここで、Rを無限大の極限をとると、ガウス積分になることを用いると、
\displaystyle \lim_{R\rightarrow\infty} -\frac{1}{\sqrt{2}}(1-i) \int_{-R}^{R} dr e^{-ar^2} = -\frac{1}{\sqrt{2}}(1-i) \sqrt{\frac{\pi}{a}}
となります。

(4): これは(2)と同様の議論から無限大極限でゼロに収束します。

以上から、(1)-(4)の和がゼロになる(コーシーの定理)ということなので、
\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} dx e^{-iax^2} = \frac{1}{\sqrt{2}}(1-i) \sqrt{\frac{\pi}{a}}
が得られます。

このままでもいいですが、もう少し簡単にできて、
\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}(1-i) = e^{-i\pi/4} = \frac{1}{\sqrt{e^{i\pi/2}}} = \frac{1}{\sqrt{i}}
であることを用いると、


フレネル積分の解
\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} dx e^{-iax^2} = \sqrt{\frac{\pi}{ia}}

が得られます。

面白いことに厳密には複素積分をする必要があるのですが、
実用上は単純にガウス積分の係数に虚数iがついただけの結果になりますね。

ガウス積分


ガウス積分

aを正の定数とするとき、\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} dx e^{-ax^2} \tag{A.1}
を解きます。

いろいろな解き方がありますが、その一つを紹介します。

まず、次のようにして二次元平面に拡張します。
\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} dx \int_{-\infty}^{\infty} dy e^{-a(x^2+y^2)} \tag{A.2}

これは、xy平面上を積分することになっていますが、
よくみると(A.1)を二乗しているのと等価なのがわかります。
(xyは入れ替えても同じです。)

なので(A.2)を解いて平方根を取れば、解が得られるという戦法です。

ここからは、(A.2)を解くことを考えます。
直交座標から極座標に変換 (x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta) すると、
このヤコビアンrなので、
変数変換後の(A.2)は
\displaystyle\int_{0}^{\infty} dr \int_{0}^{2\pi} d\theta\,r e^{-ar^2} \tag{A.3}
となりますね。

\thetaに関しては被積分関数\thetaに依存する項はないので積分できて、
\displaystyle 2\pi \int_{0}^{\infty} dr \,r e^{-ar^2} \tag{A.4}
が得られます。

rに関しても素直に積分すればいいです。
これもやり方はいくつかあると思いますが、こんなことを考えると便利です。
 \displaystyle -\frac{1}{2a}\frac{d}{dr} e^{-ar^2} = r\,e^{-ar^2} \tag{A.5}

これを使うと、(A.4)は
\displaystyle -\frac{\pi}{a} \int_{0}^{\infty} dr \,\left(\frac{d}{dr} e^{-ar^2}\right) = \frac{\pi}{a}\tag{A.6}
積分できます。

あとは平方根を取ればよいですね。

まとめ

実数だと簡単にできていても、複素数に拡張すると少しややこしくなりますね。

それでも、得られた結果は同じという不思議さを感じました。